【NPO通信】

IEPF・インドネシア教育振興会
(1) 渡航前準備で自文化再発見

2007年6月26日

(上)ユネスコ世界遺産・ボロブドゥール寺院でスタディー・ツアーに参加した学生たち(下)バリ島の裕福な小学校。折り紙をする富山大学の学生と現地の児童=いずれもインドネシアで

写真

 富山大学に通いながらインドネシアへの教育支援を続けている窪木靖信さんの非政府組織(NGO)
「IEPF・インドネシア教育振興会」。今年二月に学生らを連れて行ったスタディー・ツアーや現在の新たな取り組みなどを紹介する。

 【インドネシアへのスタディー・ツアーを実施して】

 インドネシア教育振興会は「えんぴつ1本からできる国際ボランティア」をキャッチフレーズとして掲げ、インドネシアへの教育支援を中心に活動している教育NGOである。活動の一環として、去る二月二十三−三月四日、現地へのスタディー・ツアー(以下ST)を実施した。第四回となる今回のSTには、富山大学の複数の学部から男子二名、女子十一名の計十三名が参加し、バリ島とジャワ島(ジョクジャカルタ、ジャカルタ、セレポン)を訪問した。

 毎回、参加する学生たちはSTの中身を自分たちで考え、準備する。現地の子どもたちへの教育支援として自分たちに何ができるのか。現地の大学生との交流としてどのような内容がふさわしいのか。

 学生のなかには、初めて海外旅行に出かける者もおり、準備はまず現地での生活の様子を学ぶことから始まる。日本では経験できない、多民族、多言語、多宗教の国インドネシア。そこでは異なる文化がどのように共存しているのか、文化の違いのために相手に失礼な振る舞いをしてしまったらどうすればいいのかなどなど、疑問はつきない。同時に、現地でその答えを確かめたいという気持ちも強くなる。STを企画すること自体から学生は多くを学んでいく。STへの参加費は、学生にとって決して安価とはいえない額だが、それ以上の対価を、学生たちは出発までにすでに得ていたと言えるだろう。

 現地では本会の現地スタッフが同行し、ユネスコ世界遺産や地震被災地、小学校や大学を訪問し、現地の人々と交流した。小学校では、日本全国から本会に届けられた文具等の支援品を子どもたちに手渡した。また、日本の昔話を紙芝居にし、猛特訓で覚えたインドネシア語で演じたり、折り紙やゲームなどを通して交流した。

 大学では、昨夏に富山を訪れ、インドネシア舞踊を披露してくれたインドネシアの学生たちと半年ぶりに再会し、今度は日本の学生たちが、これまた猛特訓で覚えた富山の「おわら」を浴衣姿で披露した。国際交流は自文化の再発見でもあることが実感された。

 現地の大学生だけでなく、すでに仕事に就いている同世代の若者たちと意見交換ができたことも大きな収穫だった。就学、結婚、就職、それらすべてにつきまとう階層の壁、それにもかかわらず生き生きと輝いている子どもたちの目。理解し消化するには時間がかかる複雑なインドネシアの現実を前に、学生たちはしばしば考え込んでいた。

 熱帯でのSTのため、体調を崩す学生も少なくなかった。プログラムがスケジュール通り運ばなかったことも多かった。ただ、学生には、そうしたことも含めて得難い異文化体験となったに違いない。日本の学生を育て、現地の子どもたちの教育改善にも寄与すべく、さらに有意義なSTのあり方を今後も考えていきたい。
 (理事・富山大学人間発達科学部准教授野平慎二)

http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/toku/npo/CK2007062602027310.html


IEPF・インドネシア教育振興会 
(2) 厳しい環境でも絶えぬ笑顔

2007年7月3日

ジャワ島セレポン市の貧困地にある国立テュナス・ムダ小学校=インドネシアで

写真

 今回は、二月に実施したIEPFのスタディー・ツアーに参加した学生の体験報告。観光地ではなく貧困地にある小学校などを訪れ、学生らは何を感じたのだろう。

 【ツアー報告】

 インドネシアの小学校を訪問した時のこと。教室に入った瞬間「なんて教室の中が暗いのだろう」と思った。電気が通っていないのだ。

 環境が整っていないのは電気だけではなかった。黒板は何回もチョークで書いた跡があって白くなっていた。教室の土の床では何匹ものアリが虫の死がいに集まっていた。机は傷だらけで、脚のないものもあった…。インドネシアの子どもたちは毎日毎日このような環境の中で教育を受けているのだ。

 また、筆箱を持っている子どもは一人もいなかった。机の中から鉛筆を一本だけ取りだし、消しゴムは友達から借りて使っていた。教科書やノートはボロボロだった。今まで私が当たり前のように授業を受けていた教室、当たり前のように使っていた鉛筆や消しゴム類の文房具、机やいす。こうして日本から一歩出てみると、その当たり前が当たり前でない現実があった。

 今まで自分は本当に恵まれた環境の中で学校生活を送ってきたのだということを思い知らされた。同時に、インドネシアの子どもたちはかわいそうだという思いに駆られた。

 しかしその半面、子どもたちはみんなとても笑顔がキラキラしていた。日本の子どもたちの顔にはみられない笑顔だった。学校では折り紙や絵本の読み聞かせや簡単なゲームをした。言葉は通じなくても、ジェスチャーや「OK」の一言で心がつながった気がした。訪問を終えて学校を離れる時、子どもたちは教室の外まで出て、満面の笑みで見送ってくれた。私たちの訪問が子どもたちの心の中に残り、これから先も勉強を続けていく子どもたちの、何かのきっかけになったらいいなと思った。

 今回の訪問を通して、インドネシアに寺子屋を建設し、学校以外でも子どもたちの学ぶ場や時間を提供してあげたい、という思いがいっそう強くなった。それができたら、子どもたちはもっとたくさんのことに興味を持ち、学ぶことの楽しさや喜びを感じることができるのではないだろうか。それとも、学校が普及すると、子どもたちから笑顔が消えていくのだろうか。

 今回のスタディー・ツアーでは、小学校を訪問したり、現地の人々や文化と触れ合う中でたくさんのことを学んだ。同じように、インドネシアの子どもたちにも、これからたくさんのことに興味を持って学んでもらいたい。今回、私がインドネシアに行ったことで何かが変わったわけではないし、目に見える大きな変化を今すぐに求めることはできない。けれども、インドネシアの子どもたちの教育が少しずつでも改善されるよう、できることから続けていきたいと思った。 (中村明恵)

http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/toku/npo/CK2007070302029242.html


IEPF・インドネシア教育振興会
(3) 理解し働きかけることが大事

2007年7月10日

国立グンブリ第2小学校で児童と一緒に折り紙をする筆者(左)=インドネシア・バリ島で

写真

 学生のスタディーツアー第二弾。日本の学生が、インドネシアの同世代や子どもたちに会い、さまざまな
違いに驚き、感じたことを書いてもらった。

 【ツアー報告】

 今年二月、初めてインドネシアを訪問した。バリ島、ジャワ島のジョグジャカルタ、首都ジャカルタを回ったが、観光客が多くにぎやかなバリ島と、ビルが建ちビジネスで訪れる人が多い首都ジャカルタは、同じ国なのかと思うくらい雰囲気が違った。

 現地の二十歳前後の同世代の人たちと交流したが、大学生と田舎に住んでいる人では、生活が違うように感じた。日本語を専攻している大学生の夢を聞くと、ガイドの仕事をしたいとか、成功したいから日本語を勉強していると話してくれた。田舎に住んでいる同世代の人たちは、学校に行くには月給の半分近くの学費がかかるため、学校に行くことが難しいと聞いた。夢を聞くと、将来、両親をメッカに連れて行きたいと話してくれた。

 ツアーの全体を通じて強く印象に残ったのは、インドネシアの生活格差である。日本の路上生活者が大阪や東京の大きな都市に多いように、インドネシアでも首都のジャカルタでそのような人を多くみかけた。また、インドネシアでは小さな子どもたちまでが親と一緒に観光客に物を売っていて、どう対応したらいいのか困った場面もあった。

 しかし、小学校訪問では子どもたちはみんな、どこの小学校でも笑顔で迎えてくれた。子どもたちと、紙芝居や、じゃんけん、折り紙などをして交流した。言葉も通じないし不安だったが、真剣に折り紙を折る姿や楽しそうにじゃんけんで遊ぶ子どもたちを見て、安心した。写真を撮ろうとしたら笑ってこっちを向いてくれたのが印象的だった。

 また、建物は日本の小学校とは違い、一階建てであった。いくつか教室があるだけで、机やいすも充実しているとは決して言えない状態であった。もちろん、理科室や家庭科室のような特別な教室はなかった。

 小学校を卒業してからみんなが学校に通い続けられるわけではない。特に田舎では卒業後、家事労働をしなければならない状況にある子が多い。そのような状況が、子どもたちにとっては普通なのだと思うと、日本との違いを感じずにはいられなかった。やはり学校に通うのにも、生活していくためにもすべてお金が必要であることをあらためて感じた。

 実際に現地に行き、子どもたちの生活を見ることで、日本にいてただ募金をするだけでは見えてこない教育支援の必要性を強く考えさせられたツアーだった。募金、ボランティアなどどこでも聞く言葉であるが、一番大切なことはやってあげているというような気持ちでなく、本当に理解をして働きかけることだと思う。
 (富山大学人間発達科学部三年 岸本真由美)

http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/toku/npo/CK2007071002031237.html


IEPF・インドネシア教育振興会 
(4) トランク教材で国際理解教育

2007年7月17日

昨年11月の国際理解教育・開発教育研究会の参加者=富山市の富山大で

写真

 富山大人間発達科学部は、県内の教員や学生、市民を対象に国際理解教育・開発教育研究会を実施している。インドネシア教育振興会も昨年の研究会に参加した。同学部の田尻信壹教授に昨年の研究会での発表や今年の予定などについて紹介してもらった。

 日本社会で国際化という言葉が使われ始めたのは、一九七〇年代であったと記憶している。そのときは首都圏など大都市での特殊な状況と思っていたが、近年では地方都市でも外国人と日常的に接する機会が一般化した。法務省入国管理局によれば、外国人登録者数は昨年末に二百八万五千人に達し、総人口に占める割合は1・63%となったという。十年前と比べると、一・五倍に増加した。また富山県における昨年末の外国人登録者数は七十カ国一万四千八百九十一人で、十年前に比べるとこちらもほぼ二倍となった。この状況からも、国際理解や身近な地域の国際化について学校で学習することは重要なことと考える。

 私が勤務する富山大学の附属人間発達科学研究実践総合センターでは、このような状況を踏まえ、毎年、県内の教員や学生、市民を対象に国際理解教育・開発教育研究会を実施している。昨年は窪木靖信氏「インドネシア教育支援のボランティア活動を通しての教材開発」、田尻信壹「ケータイを使っての多文化カルタ作り」の研究発表と、藤原孝章氏(同志社女子大学教授)による講演を行った。

 窪木氏はインドネシア教育振興会を主宰し、同国の子どもたちへの教育支援を精力的に行う著名なNGO活動家である。当日の発表では、同氏はバティック(ろうけつ染めの布)などの実物や子どもたちの様子を撮った写真などを詰めたトランクを会場に持ち込み、それらを使ってインドネシア理解のための教材開発について話された。

 同氏が紹介されたトランク教材は「アウトリーチ教材」と呼ばれるもので、筆者がその制作をすすめた経緯がある。今日の多文化社会に生きる子どもたちの市民的資質を育成する上で、同氏が開発された教材は大変貴重な成果であると思う。学校からの希望があれば、窪木氏はトランクをもって出向き、出前授業を行うとのことだ。ぜひ、県内の多くの学校でこの教材を活用していただきたいものである。

 今年も十一月に移民をテーマに国際理解教育・開発教育研究会を企画している。詳細については、十月以降、実践総合センターのホームページ(http://www.cerp.u-toyama.ac.jp)に掲載する予定なので、ぜひそちらをご覧いただきたい。そして、多くの方々がこの研究会に参加してくださることをお願いする。
 (富山大学人間発達科学部教授・田尻信壹)

http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/toku/npo/CK2007071702033233.html


IEPF・インドネシア教育振興会 
(5) 4、5日子ども向け交流催事

2007年7月24日

子ども向けの国際理解イベントに参加する留学生=富山市の富山大五福キャンパスで

写真

 八月、インドネシア教育振興会が、富山大の学生や留学生たちと、三年目となる国際理解を深めるためのイベントを予定している。留学生や市民らがボランティアで参加する。

 「第三回国際理解まるごとインドネシア −各国からの留学生と遊ぼう」。現在、八月四、五日に開催する「子ども向け国際理解・交流体験イベント」に向け準備を進めている。

 この交流体験イベントは、国際化が進む地元富山の子どもたちへの国際理解教育の一環で、二年前から実施し今年で三回目を迎える。実施を支えているのは富山大のボランティア学生たちである。毎回、当会と大学生ボランティアが子どもの視点で、楽しみながら体験交流できるイベントに向けアイデアを出し合って進めている。

 今回イベント実施委員長に富山大人文学部二年の伊藤岳大さんが抜てきされた。今年のテーマは「各国からの留学生と遊ぼう」で留学生も交え五月から毎週二回ミーティングし準備を進めている。インドネシアからの留学生はもちろんのこと、ロシアや韓国、中国、タイなどからの留学生が参加している。留学生は、自国での生活の写真や情報をまとめた紹介パネルの製作をしている。民族舞踊の披露も計画し踊りの準備、民族衣装体験の準備を進めている。

 このイベントには複数の学部の学生や一般市民の方々が協力している。イベントポスターには、高岡キャンパスの中道薫君が担当し子どもが楽しめるイメージを創(つく)り出している。留学生・大学生とともに親子でも楽しみながら自文化を見つめ直す機会にもなればと竹細工体験や音楽体験も計画している。そこでは、水鉄砲や灯籠(とうろう)を手作りしようと辻下孝司氏(NGO・NPOネットワーク事務局長)が協力し、懐かしのフォークソングは、シンガー英樹氏(楽屋姫リーダー)が披露する。

イベントをPRするチラシ

写真

 四日の夜には今年二月に行われたインドネシア・スタディーツアーでの現地報告も予定されている。参加者の太田昌宏さん(富山大学院生)は、「私たち富山大学生が見た世界を、県内の皆さまにも見て感じてほしいと願っております。ぜひご来場いただき、世界のさまざまな文化や社会を理解することで、あらためて日本を、そして富山の素晴らしさを実感してください」と言う。副実行委員長の高島早希さん(富山大経済学部二年)は「楽しく国際理解をテーマにゼロから企画しています。さまざまな交流を通して、当日は外国のお友達をつくりませんか」と呼びかけている。

 また、会場のステージでは異文化を紹介できるグループを募集している。異国の舞踊(フラダンス、フラメンコ、サンバetc)を披露できる方はぜひご連絡ください。

 八月一日(水)〜六日(火)には、富山駅前CiC1Fアトリウムにてボランティア活動の写真展を常時開催しています。インドネシア教育振興会・窪木靖信=sb930jp@yahoo.co.jpまたは電話090(3764)0583=へ。

http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/toku/npo/CK2007072402035305.html


IEPF・インドネシア教育振興会 
(6) 相互理解へ来月ツアー

2007年7月31日

【上】バンドン市内のストリートチルドレン【下】バンドン郊外の小学校

写真

 インドネシア教育振興会が八月に実施するグローバル・スタディーツアーの内容を紹介する。グリーンツーリズムや現地の小学校で住民や児童との訪問、大学での学生との交流など。現地の人々の自然な生活を体感しながら、相互理解を深める。

 グローバル・スタディーツアー・夏(以下ST)の参加者を募集している。インドネシアへ訪れNGO活動を通して「一生忘れない 交流と体験」を目的に実施するものである。参加条件は一つ、自分のことは自分自身でできることのみである。年齢・性別は特に問わない。

 八月十九日から二十二日の間に日本を出発し八月二十七日から二十九日に帰国する自由設計を可能としたSTである。STでは、観光地であるバリ島を訪れることから始まる。いわゆる日本で「グリーンツーリズム」と称される農村漁村に住む人々と都市に住む人々との交流である。二十、二十一日に当会がバリ島の貧困地域の小学校に去年九月に新築・引き渡した図書館の実態調査と住民・児童との交流である。読書の習慣がなかった子どもたちがどのように変化しているのだろうか。

 また小学校や障害児の学校を訪問する。現地の学校や生徒から日本語の勉強をしたいとの要望があり、楽しい日本語の授業をしながら需要と方法を検討する。

 二十二日には富山大人間発達科学部の佐藤幸男学部長と合流し、国立ウダヤナ大学との学部間交流協定締結に同行する。同学部は二〇〇五年十月に新富山大学の誕生とともに発足「人を教えるヒトを育てる学部」をキーワードにしている。一方、ウダヤナ大は一九六二年に設立された総合大学で外国人向けのインドネシア語コースもある。このような歴史瞬間に立ち会い、異国の大学生と交流する。

 二十三日にはバリ島から空路ジャワ島に移動し、バンドン会議(一九五五年四月に行われた第一回アジア・アフリカ会議)で有名になったバンドン市へ向かう。二十四、二十五の両日を使い、バンドンの郊外にある六十年ほど前に旧日本軍が建設し倒壊寸前の校舎を二〇〇五年当会が再建した小学校と周辺の実態調査、またスラムにある小学校とストリートチルドレンとの対話を試みる行程である。

 今回のツアーでは特にNGO活動に興味がある人や大学生で論文を書こうと思っている学生に参加していただきたい。インドネシアの社会事情(ジャム・カレッ=ゴムの時間)に考慮し訪問ポイントごとに二日間組んである。つくられた光景を見るのではなく、現地の人々の自然な生活を体感し交流したいからである。

 STでは、現地人スタッフはもちろんのこと日本語を勉強しているインドネシア人大学生ボランティアが私たちをサポートする。そんな出会いからも相互理解が進めばうれしい。

 問い合わせは、インドネシア教育振興会=電子メール<sb930jp@yahoo.co.jp>。
ツアー情報はホームページアドレス<http://www.baliwind.com/iepf/studytour07sl.html>。
 (IEPF代表・窪木靖信)

http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/toku/npo/CK2007073102037438.html


IEPF・インドネシア教育振興会
(7) WEB教材で国際理解

2007年8月7日

WEB教材は知識を増やすだけでなく、生活が他国との相互依存関係にあることも気づかせてくれる

写真

 今回はIEPF(インドネシア教育振興会)が企画・制作した、インドネシアについて学ぶWEB教材の紹介。楽しみながら知識を増やすだけでなく、生活が他国と相互依存関係で成り立っていることに気づかせる契機ともなるよう工夫されているという。

 IEPF(インドネシア教育振興会)は、インドネシアの子どもたちの教育支援活動に取り組んでいる富山のNGO(非政府組織)である。私は公立中学校に勤務しているが、前任校の生徒会は「感謝の心を広めよう」を目的に、IEPFの協力を得ながらインドネシアへの文房具寄付活動に取り組んだ。同会は教育支援活動だけでなく、日本の子どもたちに「国際理解と国際協力、互恵と寛容の精神、そして地球市民としての意識を育む」ことも目的に掲げている。その一環として、同会はWEB教材「国際理解 はじめの一歩 インドネシア バリ島編」を企画・制作した。内容は、「知識・情報編」「実践・実務編」「発表・交流編」から構成されている。

 「知識・情報編」では、インドネシアの歴史、政治、経済、文化、生活など多方面から学ぶことができる構成となっている。豊富な写真や映像、音声、クイズなどを取り入れ、児童・生徒が楽しみながら知識を得ることができるよう工夫されている。

 ほかにも、このWEB教材の優れた点がある。それは、インドネシアについての単なる「物知り」を増やすのではなく、私たち日本人の生活や他国との関係の在り方について振り返らせる契機になることである。

 例えば、インドネシアの子どもたちにとっての「一本の鉛筆」の意味と日本の子どもたちのそれが大きくかけ離れていることへの気づきは、見失われがちな「学ぶ意味」を考えさせる好機になるであろう。両国の関係を知ることは、自分たちの生活が他国と相互依存関係で成り立っていることに気づかせることになるだろう。インドネシアを「窓」として、国際理解教育への導入として活用できる。

 「実践・実務編」では、日本の子どもたちが実践できる支援活動について段階を踏んでわかりやすく紹介している。また、「発表・交流編」では、実践や意見発表の書き込みの場が設定されており、このWEB教材の利用者の情報交換の場となっている。情報の受信だけでなく発信の場が保障されていることで、このWEB教材は改善されていく可能性がある。

 生徒会活動でのボランティア活動、社会科や総合的な学習の時間等での国際理解教育の導入や調査活動や教材研究の情報源、地域での学習会のテキストなど、このWEB教材の活用は幅広い。このWEB教材は、http://www.my-friends.jp/で入手できる。国際理解教育に関心のある方はぜひ一度ご覧いただきたい。 (富山市山室中学校・林哲哉)

http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/toku/npo/CK2007080702039253.html


IEPF・インドネシア教育振興会 
(8) 国際イベントで交流仲立ち

2007年8月14日

富山大の留学生が子どもたちと交流したイベント「国際理解まるごとインドネシア」
=富山市のCiCビル前で

写真

 インドネシア教育振興会は、独立行政法人国立青少年教育振興機構「子どもゆめ基金」からの助成を受け、インドネシアを中心とするアジア各国の様子を富山の子どもたちに紹介するイベント「国際理解まるごとインドネシア」を開催している。第三回となる今年は、去る四日(土)、五日(日)の二日間、富山市内のCiCビル前広場で「各国の留学生と遊ぼう」をテーマに開催した。

 富山大学に留学中のインドネシア、中国、ロシア、ハンガリー、タイ、ガーナなどからの留学生に協力を仰ぎ、それぞれの国を紹介するパネル展示、留学生とのドキドキおしゃべり、民族衣装の試着などのブースを設けて、富山の子どもたちに各国の文化に触れ合ってもらった。留学生には自国の歌や踊りを披露してもらい、インタビュー・コーナーでは日本や富山の印象を率直に語ってもらった。

 また、インドネシア貧困地の小学校の教室を再現したブースも設け、子どもたちに現地の教育環境の一端を体験してもらった。さらに、CiCビル一階フロアでは、スタディー・ツアーの時に学生が撮影したインドネシアの人々の写真を展示し、現地の生活の様子を一般の多くの人に見てもらった。

 イベントに足を運んでくれた子どもたちは、普段あまりなじみのない国々の留学生を前に少し緊張していたようだった。無理もないことである。しかし、各国の華やかな衣装や舞踊、おもちゃや楽器などには関心をひかれた様子だった。

 子どもたちの興味や関心をひきつつ、しかしながらステレオタイプに陥らないように、その国の様子を紹介し伝えていくにはどのようにすればいいのか。これは、毎年イベントを開催するたびに直面する難しい問題である。一回だけのイベントで、ひとつの国のすべてを伝えることは不可能である。まずは関心をもってもらうこと、その関心を維持してもらうこと、そしていずれは現地への教育支援の行動を起こしてもらえればと、心のなかで願っている。

 富山の子どもたちに各国の何を、何のために知ってもらうのかは、イベントを企画・実施する学生ボランティアたち自身の問題でもある。単に楽しいだけではなく、何らかの学びのあるイベントにするため、学生たちは、各国の実情を深く理解し、歌や踊りも自ら練習し、それを子どもたち向けに楽しくアレンジして運営に当たる。運営上のこまごました失敗も多いが、そうした失敗も含めて、イベントの開催が学生たち自身にとっても大きな糧となることを願う次第である。

 今回のイベントにご協力をいただいた関係各位に、あらためて心よりお礼申し上げたい。そして今後も、留学生、学生ボランティア、そして富山の子どもたちの力を借りながら、富山とインドネシア(さらにはアジア各国)の交流を仲立ちできればと考えている。 
(IEPF理事、富山大学人間発達科学部准教授・野平慎二)

http://www.chunichi.co.jp/article/toyama/toku/npo/CK2007081402040929.html